おはようございます。倫子(ともこ)です。

昨日の朝、牛舎から帰って来た稲馬が
「いちこちゃん、脂肪壊死かな」と言い出しました。

「いちこ」は来月青年部の共進会に出る予定の牛です。
米沢牛の認定は32ヶ月齢以上なので(詳しくは米沢牛の定義をご覧ください)
それを過ぎるとすぐ出荷させる場合が多いのですが、
稲馬は青年部の共進会には33ヶ月齢以上の牛を出したいと言って
「いちこ」を長期で肥育することにしていました。
長期で肥育した牛肉は味が良いと言われるそうです。

32ヶ月と33ヶ月。
たかが1ヶ月という感じがしますか?

普段私たちは32ヶ月で牛が出発することを想定して育てています。
ある程度の月齢が経てば食欲も大きさも落ち着いてきます。
そこを32ヶ月までしっかり食べられるように、
そして霜降りの米沢牛として牛の能力を発揮できるように手をかけるんです。

32ヶ月齢というのは牛の肥育で比較的長い期間です。
それをさらに1ヶ月延ばすということは
何もなくプラス期間を過ごすこともあるけれど、
牛の体調をさらに考慮しなければいけないし、
エサ代はかかるし、事故の可能性もあります。

とわかっていたつもりだったところで、「いちこ」の食欲不振。
何日も前から気になっていました。

昨日の朝、稲馬は直腸に手を入れて体の中を触診する直検をしてみたそうです。
すると、ある程度のところで行き止まりのようになったと言います。
「この感じを共有したいから直検して」というので
午前の仕事中に私も直検してみました↓
2016.2.5いちこ脂肪壊死?直検HPブログ

たしかに自分の腕を伸ばし切ったところで直腸壁の向こう側に硬い塊があって
直腸内を圧迫しています。
「いちこ」の糞は硬めが続いていたのですが
これでは排便するのも大変そうと思いました。

お父さんが言うには硬い便の後に下痢をするようになったら危ないのだそうです。
稲馬は、そうなる前にどんどん食べなくなって痩せていってしまうと心配していました。

1ヶ月後まで大丈夫かもしれないし、
もしかするとこのまま食欲が落ちて痩せていくかもしれない。

痩せていった牛を出品するというのは気が進まないというか、
べこ飼いのプライドが許せないのかな。
私はまだそこまで肥育の世界がわかっていないのですが、
米沢牛としてベストな状態で出したいという気持ちが育てている者の牛への誠意だと思います。

稲馬は青年部の共進会には違う牛を出して
「いちこ」は18日の枝肉市場に出してもらうよう手配しました。
予定外に早くなった「いちこ」の出発。
無事に行けますように。